ダンゴムシの交替性転向反応の解説・理由・メカニズム
ダンゴムシやワラジムシには交替性転向反応という習性が見られます。また、この交替性転向反応の確認実験として、よく迷路をやらされているようですが、実はダンゴムシは人間のように迷路を解くことができるというわけではありません。
交替性転向反応がどういう反応で、その理由はなにか、また、迷路実験の自由研究に関してなども併せて紹介していきたいと思います。
交替性転向反応とは
交替性転向反応とは、動物に見られる行動に関する習性のひとつで、右に曲がった後には左、左に曲がった後ならば右に曲がるというように、曲がる向き(転向)を入れ替えて(交替)進む習性のことです。簡単にいうとジグザグに進むということです。
広く見られる習性
交替性転向反応が見られる動物は、ダンゴムシ以外にもゴキブリやゾウリムシなど、幅広い種(ヒトの精子でも!?)で観察されている習性ですが、ダンゴムシやワラジムシでは特に反応が顕著であるとのことです。
なぜ交替性転向反応は起こるのか
ダンゴムシなどが交替性転向反応を見せる理由はなにか。その発生メカニズムは現在ではBALM(バーム)仮説によって説明されています。
BALM仮説とは
BALM仮説とは、交替性転向反応は左右の脚の負荷を同じにしようとして起こるという説です。簡単にいうと「右脚使いすぎたから左脚使おう!」ということです。
また、BALMによって進行方向および触角の接触反応に傾きが生じる結果、交替性転向反応が起こるという説もあるそうです。
進化的理由
では、交替性転向反応のような習性を持った個体が結果的に増えた理由はなんでしょうか。進化的な面においては、交替性転向反応は具体的にはどのような効果があったのでしょう。
えさと交尾
生き物が増えるために重要なのは、食べることと交尾することですが、交替性転向反応はこの2つにも影響すると考えることができます。
交替性転向反応が起きない場合、(限定的な状況下ではありますが)同じ方向に曲がることになって結果的に同じ場所をウロウロする可能性が高くなります。
一方で交替性転向反応が起こる場合はその逆で行動範囲が広がるので、えさを見つける確率、異性に出会う確率が高まるのではないかという考えが、交替性転向反応の理由として挙げられます。
天敵対策
また、交替性転向反応によって、起点からより離れることができるため、天敵の餌食になる可能性が下がったのではないかという理由も考えられています。
また、突っついたりしてダンゴムシに「逃げなきゃ!」と思わせたケースの方が、より交替性転向反応が起こりやすいのではないかという考えもあり、天敵対策という理由を補っています。
あくまで傾向である
もちろんですが、交替性転向反応というのは絶対に起こるといった習性ではありません。個体によって差もありますし、次の転向位置までの距離も影響します。また、例えばダンゴムシの苦手な光を使うことで、交替性転向反応は起こりにくくなるといった情報もあります。
迷路実験
交替性転向反応を連続的に観察したい場合、T字路が多く、そして転向位置の間隔は数cm程度が適しているので、迷路のような環境が向いています。また、ワラジムシよりものろのろなので観察しやすいため、ダンゴムシは迷路をやらされる機会が多い生き物のようです。
迷路が得意なわけではない
説明したとおり、交替性転向反応は迷路が解けるようになるものではありません。ダンゴムシに迷路をクリアさせるには、交替性転向反応を推測して設計する必要があります。
自由研究に適している
身近な生き物とその習性の観察、そして簡単な工作をして実験するなどといった要素は、非常に子どもの好奇心を刺激するため、ダンゴムシの迷路実験はよく夏休みの自由研究などの対象になるようです。
交替性転向反応自体の観察は難しくないと思いますが、実験に使うダンゴムシはできるだけ多い方が良いでしょう。できれば100匹用意して実験し、そのまま結果を%で出すとわかりやすいでしょう。
工作に関してはダンゴムシが登れない素材(おもちゃのブロックなど)が向いていると思います。また、日差しの向きや空気の流れなども少なからず影響すると思うので注意してください。
自由研究における創意工夫という点で、付加的に独自の仮説をたてて、それを実験で検証するなどすれば、非常にすばらしい体験になると思いますので、ぜひ挑戦してみてください。