交尾と求愛行動の謎。ダンゴムシミステリー!

ダンゴムシの交尾については実にミステリアスで、けっこう謎に包まれている部分が多いと思います。残念ながら今までにダンゴムシの交尾を観察したことはありません。また、特に生き物の交尾に詳しいわけでもありませんが、飼育と観察を通じて、ダンゴムシの交尾の謎に迫ってみたいと思います。

交尾器

ダンゴムシのオスの交尾器
オスの交尾器。脚よりは短い。

ダンゴムシは腹部にある交尾器を使って交尾を行います。

オスの交尾器は目視で確認できるほどの大きさで、1対の針のような形状をしています。これ自体が生殖器なわけではなく、交尾の際に精子をメスに送る役割を持つ器官のようです。

メスの交尾器はなかなか観察することはできませんが、どうやらオスの交尾器を挿し込む穴のような器官であるとのことです。

ダンゴムシの交尾を想像するにあたって、重要になってくるのがこのオスの交尾器の長さですが、見た感じでは脚の半分くらいの長さです。

求愛行動

繁殖期のダンゴムシを観察していると、おかしな行動をとっているのをよく目撃します。これはおそらくダンゴムシの求愛行動で、いくつかのパターンがあることに気付きます。それぞれの場面を思い起こし、ダンゴムシの求愛行動を順番に列挙してみます。

まず、オスが興奮した様子でメスのお尻を追いかけます。

オスは何かを感知するとメスを追いかける。
オスはメスに近づくと、唐突にスイッチが入ったようにメスを追いかけ始める。メスの分泌するフェロモンを感知していると思われる。

メスはお尻を触られると、猛ダッシュで逃げます。

メスはダッシュで逃げる。
メスは猛ダッシュで逃げるが、単に接触走性によるものなのか、それともオスを感知して避けているのかもしれない。

メスが逃げきった場合、お互い元に戻ります。

オスもメスも元に戻る。
オスはメスを見失うと突然スイッチが切れた様子で、元の冷静な状態に戻って再び彷徨い始める。逃げきったメスも通常のスピードに戻る。なお、2匹は再度巡りあっても再燃せず、何も起こらない様子。

メスが捕まった場合、オスはメスの背中によじ登ります。

オスは顔を近づける。
オスはメスの顔に自分の顔を近づけて、触角でメスの顔面を触りまくる。なお、オスをおんぶしたこの状態で、メスはいつも通りにウロウロしたり、えさを食べたりもする。

メスは捕まるとジタバタもがいて、逃げるのに成功することもあります。

オスに乗っかられる前に、脚をバタバタさせたり体をひねらせたりして、とにかく逃げようともがくこともある。
オスに乗っかられる前に、脚をバタバタさせたり体をひねらせたりして、とにかく逃げようともがくこともある。

メスは丸まって防御体勢に入ってしまうこともあります。

メスは嫌がって丸まってしまう。
メスが丸まるとオスも横になり、添い寝するようにしてメスを抱き込みむ。

空気の読めないオスは飽きらめずに、丸まったメスを抱き込んで体中を触角で撫でまくります。ときには球体になっているメスをコロコロしたりします。

飽きらめずにコロコロする。
オスはしきりに触角を使って、メスの防御を解こうとしているようにも見えるし、顔(お尻)のあたりを探っているようにも見える。

この行為は(観察者が飽きてしまうくらい)かなり長い間続くことが多いです。

以上が、観察しているとよく目撃する求愛と思われる行為になります。

体位を想像する

続いて、ダンゴムシの交尾における体位を想像してみましょう。ダンゴムシの体形や交尾器の形状から考えると、以下の3パターン思い付きます。

ダンゴムシの交尾の体位の想像
ダンゴムシの交尾の体位の想像
  • 向い合って事に及ぶパターン(a)
  • 同じ方向を向いて事に及ぶパターン(b)
  • ちぐはぐになって事に及ぶパターン(c)

(a)は、ザリガニなどと同じ体位で、一番可能性が高そうな気がします。

(b)は、オスの交尾器の長さを考えるとメスの交尾器に届きそうもありませんが、ぼ伸縮機能があればギリギリ届くかもしれません。質感の様子からは、そのまま伸びるというよりは、釣竿や折りたたみ式ナイフのように、可動部分によって長くなるといった感じです。さらに、メスの交尾器の位置によっても交尾が可能かどうかが決まります。つまり、メスの交尾器の位置が外側に付いているのであれば、オスが背中に乗っていてもなんとかオスの交尾器が届きそうですが、ザリガニのように少しでも内側に付いているのであれば、届きそうもないというわけです。

続いて(c)ですが、この体位は求愛行動の流れを考えると、実はかなりあり得るのではないかと思っています。オスがメスの背中を這い登った後、さらに顔を通過してそのままお尻まで進むと、この体勢になるからです。さらに、丸まっているメスに対してもこの体位は考えやすいです。

タイミングを想像する

次に、いつ事に及んでいるのかという、交尾のタイミングについて想像してみたいと思います。ダンゴムシの交尾は一瞬でも可能なのか、それとも何分も必要なのかなど、不明な点はありますが、求愛行動の流れに沿って考えると、交尾のタイミングには次の4パターンが思い付きます。

  • オスがメスを捕まえた後にメスがもがいているとき、どさくさに紛れて交尾
  • オスがメスに乗っかっているときに交尾
  • オスがメスを転がしているとき、一瞬の隙を突いて交尾
  • オスのしつこい求愛の後に、メスが観念して交尾

考察

では、交尾の体位とタイミングの想像を元にして、それぞれの組み合わせとその可能性を評価してみたいと思います。

タイミング(a)向い合って(b)後ろから(c)ちぐはぐ
どさくさに紛れて交尾×
乗っかっているときに交尾××
転がしているときに交尾××
観念して交尾×

まとめるとこんな感じでしょうか。

  • メスが捕まった後、もがいているときにやりやすい体位で交尾
  • メスにオスが乗っかっているときに、交尾器を伸ばしてその姿勢のまま交尾
  • メスが丸まり、オスが転がしているときに、なんとかこじあけて交尾
  • 執拗なオスに観念し、好きな姿勢で交尾

ダンゴムシの交尾のバリエーションは多岐に渡る可能性もあるかもしれませんが、もしひとつのパターンであれば、上記の場合は下にいくほど可能性が高まります。なぜなら、交尾の後にも求愛行動をし続けるとは考えにくいからです。

結論と答え

つまり、ダンゴムシの交尾はメスがオスの求愛行動に観念したときに、向かい合った体位で行われている可能性が高いのではないかと考えられます。

あとは、実は上記の求愛行動はメスが交尾を嫌がった場合にだけ見られる行動であるパターン。人目の付かないところで密かに交尾は行われているが、メスが交尾を嫌がった場合にだけ求愛行動が発動し、これによって人目に付いて観察されるという場合です。このパターンなら、いくら観察していても交尾が行われないというのが納得できます。

なんにせよ、これからもyoutubeで「ダンゴムシ 交尾」で検索を続けていきたいと思います。

(追記)「だんだんダンゴムシ」さんのこちらのページに答えを発見したので載せておきます。残念ながら推測は外れました・・・。

最後に、飼育下のダンゴムシたちの写真をご覧ください。

ダンゴムシの求愛行動
オスは頭を探しているように見える
ダンゴムシの求愛行動
後ろから。交尾器はとても届きそうもない。。。
ダンゴムシの求愛行動
オスはやはり顔に興味があるように思える。
ダンゴムシの求愛行動
完全に接吻しているように見える。
ダンゴムシの求愛行動
メスは乗られると、嫌がる場合もあるけどそのままの場合もある。
ダンゴムシの求愛行動
顔をいじっているときに触角が取れるのではないかと思っている。参考ページ「触角1本のダンゴムシの原因を探る
ダンゴムシの求愛行動
モテモテのご様子。